SNSを見ているとよく見ることば「無農薬」
実は「無農薬」という表示は「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」に違反しています。今日は「無農薬」「無化学肥料」「減農薬」「減化学肥料」といった表示についてお伝えします。
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1.無農薬ということばで農産物を売ってはNG
「無農薬」だけでなく「無化学肥料」「減農薬」「減化学肥料」といったことばを表示して農産物を販売することは
「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」で禁止されています。
農林水産省「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」
2.特別栽培農産物とは
その農産物が、生産された地域の慣行レベル(各地域の慣行的に行われている節減対象農薬及び化学肥料の使用 状況)に比べて
節減対象農薬の使用回数が50%以下かつ化学肥料の窒素成分量が50%以下で育てた農産物
【ガイドラインで節減対象の化学合成農薬】
参考/農林水産省「特別栽培農産物に係る表示ガイドラインパンフレット」
酢は農薬として認められていて、殺菌効果が期待できます。
なので殺菌目的で酢を使用すると正確には「無農薬」と言えないのです。
天敵は例えばアブラムシに対してテントウムシなど
アブラムシ駆除の目的でテントウムシを捕まえて使用すると特定農薬になるんですね。
あとはカマキリも虫を食べてくれるので特定農薬となり、「無農薬」とは言えなくなるのです。
3.なぜ「無農薬」と表示できないのか
「無農薬」「無化学肥料」の表示は、消費者が一切の残留農薬等を含まないとの間違ったイメージを抱きやすく、優良誤認を招くため、表示禁止事項です。
「減農薬」「減化学肥料」表示は、削減の比較基準、 割合及び対象(残留農薬なのか使用回数なのか)が不明確であり、消費者にとって曖昧で分かりにくい表示であること、
さらに「無農薬」の表示は、「有機JASマーク(原則として収穫前3年間以上農薬や化学合成肥料を使用せず、第三者認証・表示規制もあるなど国際基準に準拠した厳しい基準をクリアした表示)」よりも優良であると誤認している消費者が6割以上存在する(「食品表示に関するアンケート調査」平成14年総務省)など、消費者の正しい理解が得られにくい表示だったため、表示禁止事項となっています。
参考/農林水産省「特別栽培農産物に係る表示ガイドラインQ&A」
4.栽培中に農薬不使用の場合はどういう表示ができるのか
「農薬:栽培期間中不使用」といった表示や、
節減対象農薬を使用していない農産物には「節減対象農薬:栽培期間中不使用」と表示し、節減対象農薬を節減した農産物には「節減対象農薬:当地比○割減」又は「節減対象農薬:○○地域比○割減」と節減割合を表示しなければなりません。
産直での野菜を見ると「栽培中農薬不使用」と記載のある野菜を見かけますよ。
参考/農林水産省「特別栽培農産物に係る表示ガイドラインQ&A」
5.栽培期間中ってどのくらい?
「生産過程等」という表現が「消費者にはわかりにくい」ということから
「栽培期間中」の用語が用いられますが、
実際どんな期間かというと
前作の作物が収穫された時点から農産物の収穫・調製までの期間
果樹の場合は、年1回の果実の収穫時点(樹体・果実の生育及びその栽培管理が一巡する時点)から当該年の収穫・調製までの期間
お茶のように1年間に数回、収穫機会のある作物については、前年の最終収穫後から当該年の最終収穫・調製までの期間
とのことです。
種をまいてから収穫するまでではなく
前回の作物が収穫されてから土の準備をする期間も含まれるということですね。
参考/農林水産省「特別栽培農産物に係る表示ガイドラインQ&A」
6.「天然栽培」「自然栽培」といった表示もNG
特別栽培農産物の表示をする際に「天然栽培」「自然栽培」といった表現をすることは
紛らわしいため、表示禁止となっています。
【表示禁止事項】
一括表示の枠内に、ガイドラインに規定されている表示事項以外の事項を表示すること
特別栽培農産物の表示をした場合の「天然栽培」、「自然栽培」等の紛らわしい用語 (ただし、従来からの明確な基準による農法で自然等の表示を冠するもので一括表示 の枠外に表示した場合を除く)
実際のものより著しく優良又は有利であると誤認させる用語
通常の栽培方法により栽培された農産物より著しく優良又は有利であると誤認させ る用語
ガイドラインの表示事項の内容と矛盾する用語
当該特別栽培農産物の栽培方法、品質等を誤認させる文字、絵、写真その他の表示
「無農薬栽培農産物」、「無化学肥料栽培農産物」、「減農薬栽培農産物」及び「減化 学肥料栽培農産物」等の用語
7.農薬の安全性はどうやって評価している?
農薬には、ADI(Acceptable Daily Intake:1日摂取許容量)が設定されています。
ヒトがある物質を毎日一生涯にわたって摂取しても健康に悪影響がないと判断される量 「一日当たりの体重1kgに対する量(mg/kg体重 / 日 ) 」 で表示されます。
―――――――――――――
NOAEL: No Observed Adverse Effect Level
定義:動物を使った毒性試験において何ら有害作用が認められなかった用量レベル
各種動物(マウス、ラット、ウサギ、イヌ等)のさまざまな毒性試験において、それぞれNOAELが求められる。(妊娠中の胎児への影響などについても試験を実施)
全ての毒性試験の中で、最も小さい値をADI設定のための NOAELとされています。
――――――――――――――
<1日摂取許容量>
ADI : Acceptable Daily Intake
定義:ヒトがある物質を毎日一生涯にわたって摂取しても健康に悪影響がないと判断される量
「一日当たりの体重1kgに対する量(mg/kg体重 / 日 ) 」 で表示されます。
動物と人間との差や、子供などの影響を受けやすい人と、そうでない人との個人差を考慮して「安全係数」を設定し、NOAELをその安全係数で割って、 ADIを求めています。
ADI = NOAEL ※ ÷ 安全係数 (SF)
参考/食品安全委員会「一日摂取許容量(ADI)とは?」
実際の農薬の使用量はADIより少ないと言われています。
8.残留農薬の毒性はどうなの?
農薬は主に植物や虫の特定の生理機能を標的として設定されており、人間の生理機能とは異なる作用点を持つ場合が多いです。
(例)昆虫の「脱皮」という作用を阻害して死に至らしめる、昆虫の「気門」を詰まらせて死に至らしめる、草木の「光合成」を阻害して結果草木を枯らす等
そのため、人間に対する直接的な毒性は抑えられています。
残留農薬は水溶性のものが多く、摂取された場合でも尿として体外に排出されます。
これにより体内に蓄積するリスクは低いとされています。
たまにSNSで「農薬が尿から検出されました!大変!」という投稿を見かけることがありますが、体内に蓄積されず排出された証拠です。
9.農薬をどう考えるか
ついつい「無農薬」と言ってしまいがちですが、
「特別栽培農産物ガイドライン」で「無農薬」という表示は禁止されていること、
農薬を使用せず育てた場合は「栽培期間中農薬不使用」という表示ができること、
農薬や化学肥料を半分以下に減らして育てた場合は「特別栽培農産物」という表示ができること、
そもそも農薬の安全性はどのように評価されているかなどなどまとめました。
虫に食われないようにして、病気にならず、安定した収穫をしていくためには
農薬の必要性を感じます。
手間と労力をどのぐらいかけられるかにもよるかと思いますが、
労力をかけた分、価格は高くなります。
農薬は水溶性なので、水で洗い流すことでかなり落とせます。
気になる方は流水で洗い流したり、皮を厚めにむいて使用するとよいですね。
ただその分栄養は水に溶け出たり、皮に含まれる栄養をとることができません。
あとは自分がどうしたいかです。
自分が農薬とどう付き合っていくか、ぜひものさしを作ってくださいね。
最後までご覧いただきありがとうございました♡
管理栄養士 鈴木ひかり
管理栄養士歴15年
元行政栄養士(岡崎市保健所にて勤務)
離乳食相談件数1,800件以上
幼児食相談件数1,700件以上
【子どもの食の困りごと】
偏食、好き嫌い、少食、食べむら、
遊び食べ、噛まない等
様々なお悩みをその子その人に合わせた相談にお応えしています。
とよた女性の起業できますproject.ビジネスコンテスト2022
「食農がっこう」審査員特別賞受賞
豊田市育児健康相談・離乳食教室・親子食育講座・パパママ教室等講師
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